2011年01月28日

池田信夫「希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学」

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学

本書は、他の中身スカスカの経済本とは根本的に異なる。無駄な頁は1ページもなく中身が濃い。ダレ場が一切なく全ページに渡って展開される濃密な論考は著者の力量によるものである。

終身雇用、年功序列制度、企業年金制度では、正社員は若い頃に低賃金で働き中高年になってノン・ワーキング・リッチになる。若い頃に会社に貯金し年を取って引き出す仕組みのため、途中で転職するインセンティブがない。これが優秀な人材が非効率な成熟企業に滞留し、新たな成長企業に移動しない原因となっている。
成長力を失い年功序列制度、企業年金制度を維持することができなくなった企業は制度を改めるのでなく、正社員の新規採用を絞り込み派遣社員や契約社員を採用し雇用コストを落とすことで制度の延命を図っている。これにより新卒時に正社員になれるかどうかで身分が固定する新士農工商制度ができあがった。

こうした問題を本書はこれでもかというくらい徹底的に暴く。そして日本に必要なのは、財政・金融政策といったカンフル剤ではなく、日本経済の長期的な潜在成長率を高める政策であると説く。これまでの構造改革政策が中途半端に終わったのは日本経済にはまだ高度成長期に蓄積した富というバッファがあるからであり、日本に足りないのは希望ではなく、変えなければ未来がないという絶望ではないかと結論する。

論旨に納得はいくのだが、問題点の指摘だけでソリューションの提示がほとんどないため、華のない本になってしまっているのが残念だった。人材の流動性が低いという問題に対し、人材流動性を上げる政策が必要だ、では答になっていない。もっと具体的な経済政策、もしくは若年貧困層は今の社会をどう生きればよいのかの提示が欲しかった。

今、華のある経済政策論を展開するのは三橋貴明氏である。「経済ニュースの裏を読め!」は経済を理解しやすく解説してあり、しかも最後に提示されるソリューションは読むと元気が出てくる。同氏の新刊本「デフレ時代の富国論」には予約が殺到しているらしい。

若者への生き方の提示では、橘玲氏の「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」が、「伽藍を捨ててバザールに向かえ。恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。」という現実的かつ華のあるソリューションを提示している。著者が若者に幸せになって欲しいと本気で考えているのが伝わってくる。

池田信夫氏の言うとおり、日本人が絶望するまで日本経済の構造は改められないかもしれない。しかし私たちは指をくわえて待っているわけには行かない。マクロ経済に対しても自分の人生に対しても何か打開策を実行したいのだ。

参考図書:
希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
経済ニュースの裏を読め!
デフレ時代の富国論
残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法


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posted by Tabbycat at 05:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・経済を知る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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