2011年02月02日

橘玲「臆病者のための株入門」

臆病者のための株入門.jpg臆病者のための株入門 (文春新書)

タイトルの「臆病者」とは、単なる怖がりを意味しているのではない。これまで築いてきたキャリアや家族など守るべきものを持つ人々、つまり普通の人々、という意味である。守るものを持つ人は無謀な勝負で一攫千金を目指すわけにはいかない。臆病者なりの運用ソリューションが必要だ。

本書はプロの作家が普通の人々のために書いた個人資産運用の実用書である。投資をしたことがない人、勤め先に確定拠出年金が導入されたけど預金でほったらかしている、という人は得るものが大きいだろう。
冒頭は、100万円を100億円に増やしたジェイコム男(BNF)、ライブドアのホリエモン、バリ島からロンドン株式をデイトレするオランダ人バックパッカーが登場する。市場の歪みを発見すれば、レバレッジを賭けた投資で100万円を100億円にするのは決して不可能ではないことが説明される。次に資本主義社会の誕生と株式市場の発展、ウォーレンバフェットの投資手法、モダンポートフォリオ理論に基づく投資手法が解説され、金融機関のカモにされないための金融リテラシーの身に付け方、具体的なド素人のための投資方法が説明される。

まるで物語を語るかのように書かれていて読みやすい。解説スタイルを自由自在に操り、レバレッジをかけたデイトレの危険さを説明するときは、著者の実体験で感じた恐怖を語る。モダンポートフォリオ理論を説明するときはノーベル賞学者達が少しずつ真理に近づいていく過程を活き活きと綴る。

教科書的構成でないのに必要なポイントは漏らすことなくカバーされ、しかも投資の知識をある程度持っている人にも楽しめるようプラスアルファの教養も含まれている。これだけの内容が1冊の新書にまとめてあるのに無理矢理詰め込んだ感じがしない。ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルやCAPMを図表や数式を一切使わすにさらりと説明してのける著者の筆力には驚く。私がMBA時代に小難しい教科書をウンウン唸りながら読んだのはなんだったのか。。。

お金が十分にあり投資に興味がない人は資産運用などする必要はないが、そんな人でも「第7章
金融リテラシーが不自由なひとたち」は役に立つ。富裕層の財産を狙う証券会社や銀行、生命保険会社の巧言令色から嘘を見抜くノウハウが解説してある。

既にインデックス投資を始めている人は本書から実用面で得るものはない。「世界株インデックスファンドに長期投資せよ」が結論だから、読後も投資行動はおそらく変わらない。それでも読む価値はある。優れた作家が実体験を通し投資について考え抜いた文章は、インデックス投資原理主義に陥ったあなたの目を覚まさせてくれるだろう。

私も、読後に自分の投資スタイルを変えることはなかった。私は、世界分散インデックス投資と同時に、市場の歪み(アノマリー)から収益を獲得する投資を実践しそれなりの成果を上げている。実感するのは、「効率的市場仮説」はあくまで「仮説」であって「事実」ではないということだ。ハイマン・ミンスキーが提唱した金融不安定性仮説のほうが現実に近い。

アノマリーは確かに存在する。しかしそれを公開するとアノマリーは一瞬で消滅する。著者があとがきで「私自身はここで述べたような『合理的な投資法』を実践しているわけではない。」と述べ、自身の投資法を語らない理由はここにあると思う。

臆病者のための株入門.jpg





臆病者のための株入門 (文春新書)


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