2011年03月01日

知っておきたい「ゼロから学ぶ経済政策」活用法

ゼロから学ぶ経済政策  日本を幸福にする経済政策のつくり方 (角川oneテーマ21) [新書] / 飯田 泰之 (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方 (角川oneテーマ21)

今、経済政策はとてもホットな話題です。でも、これほど分かりにくい話題はありません。

政治家の経済政策論争は選挙対策の駆け引きのように見えるし、エコノミストの経済政策論争は、お互いに「お前は何も分かっていないバカだ」と罵り合っているように見えます。

私達には、結局何が正しいのか全然分かりません。

「ゼロから学ぶ経済政策」を読むと、経済政策の全体像が頭の中にスッキリと入ります。本書は経済政策を次の3つに分類して解説します。

成長政策:経済の基礎体力を向上させる

安定化政策:経済の崩れた体調を回復させる

再分配政策:豊かな人から貧しい人へお金をシフトし、不幸な人を減らす



本書の3つの経済政策を読んで、今の経済政策について考えてみました。

民主党のどこが問題か?
与党民主党の子供手当てや高校無償化は、子供を持つ人へお金をシフトさせる再分配政策です。子育て中の家計を楽にしますが、経済の成長にも安定化にもつながりません。

今は、景気が悪化し失業率が高く、経済が体調を崩している状態です。安定化政策を実施して経済の体調を回復させるべき時です。具体的には、お金を使わない企業や個人に代わって政府が財政支出を増やすべきなのです。

しかし、現政権は、財政健全化を重視し、財政支出を減らそうとしています。事業仕分けが好例です。無駄な支出をやめるのは良いことなのですが、浮いたお金を別の安定化政策に回すべきなのに、再分配政策に回されているのです。これでは景気が良くなるわけがありません。


小泉改革はマグレ?
ちょっと視点と時代を変えて、小泉総理大臣時代の経済政策を振り返って見ましょう。小泉内閣は、不況と金融不安の真っ只中にありました。セオリーでは安定化政策をすすめるべき時期でした。

しかし小泉内閣は、規制緩和という成長政策と、財政支出削減を進めました。これは、高熱で倒れているので、薬を飲んで安静にしておくべき時期なのに、走り込みで基礎体力をつけ、ダイエットしようとするようなものです。

経済政策のタイミングとしては無茶でしたが、アメリカの住宅ローンバブルによる好景気で、輸出が伸びた日本は景気が回復しました。結果として景気は回復するし、規制緩和や財政支出削減は進むしで、と非常に幸運な結果となりました。


三橋貴明 v.s. 池田信夫
ここで、現在のエコノミストの見解をいくつか紹介します。

三橋貴明氏は、安定政策推進派です。必要であれば国債を増発し、財政支出を拡大すべきと主張しています。景気が回復した後に財政支出を減らし財政健全化させるべしとも主張します。今の状況では非常に妥当な主張です。

池田信夫氏は、成長政策派です。日本に必要なのは、財政・金融政策といったカンフル剤ではなく、日本経済の長期的な潜在成長率を高める政策であると説きます。具体的には、低成長産業から成長産業へ人材が移動しやすくなるような労働市場の流動化、高齢者ノンワーキングリッチとワーキングプアの不公平の是正などです。もっともな主張なのですが、実現にはかなりの時間を要するでしょう。理論の正しさを重視して、経済政策の優先度を軽視しているように思えます。

私が知る限り、まともなエコノミストの中で、景気対策としての再分配政策を主張する人はいません。再分配政策が景気対策にならないことは基本中の基本だからです。

・・・と、このように、経済政策についてチンプンカンプンだった私でも、本書を読めば、経済政策についてこれだけのことを書けるようになりました。間違っているところもあるかもしれませんが・・・。

経済政策を理解したい人におすすめの一冊です。

ゼロから学ぶ経済政策  日本を幸福にする経済政策のつくり方 (角川oneテーマ21) [新書] / 飯田 泰之 (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方 (角川oneテーマ21)

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posted by Tabbycat at 05:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・経済を知る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
秀逸な分析でしたので、はじめてながらコメントさせていただきます。

池田信夫と三橋貴明に対する至極まっとうな分析だと思います。

日々、実体のない小田原評定のような会議の連続にうんざりしていた私の疑念にドラッガーは答えました。

「目標は具体的であるべし」

「言葉は明確に定義されなければならない」

「手段の目的化はもっとも忌むべき」

三橋貴明は「国民の幸福度向上」を目標とし、その手段を「GDPの最大化」という手段でかなえるための政策を提言します。

池田信夫は目標とすることが発言ごとに異なり(貿易収支だったり、国防だったり)何を目標としているかについて2年前からブログを愛読している私にはわかりません。
また、その方法論についてもしばしば手段を目的化する傾向があります。
要するに自己の正しさを主張するために、論理をこねくり回す傾向があります。

とはいえ、池田信夫は物事の本質を的確に理解させることについては達人の域(と私は評価している)なので、文章は大変参考になりますが・・・

この両者の対立はTPP議論において明確ですが、TPPの具体的利益を「輸入の拡大である」と明快かつ具体的に明言したのは、池田信夫ただ一人です。
この点、他の論者のTPP推進論者のあいまいさとは際立っています。

ただ、その「輸入の拡大による利益」を説明する際に、教科書的ではあるが、現実の世界に即していないモデルを提示してしまう(2国間貿易において貿易の不均衡は解消可能と主張する)のが池田信夫の限界でしょう。

池田信夫はWin-Winの貿易関係が成り立つと主張していますが、彼の文章には一つとしてその成功例がありません。また、私自身も片方が赤字でない貿易関係を史上1例も知りません。

仮に実質的な日米FTPであるTPPによって、アメリカの対日貿易赤字が解消されることを池田が言っているのであれば、経済理論としては理解できなくはないですが、日本人としては看過できないお話です。

池田信夫は少なくとも3年前から三橋貴明を意識し、たびたび批判的なコメントを発表していますが、自分の経済論のために活動する池田(のみならずほとんどの経済学者)が、国益のために活動する三橋を嫌うのは必然でしょう。

かつて、1929年の大恐慌で街にあふれかえる失業者を見て、高名な市場原理主義者はなお「これは労働市場の方が間違っている」とのたまいました。

経済の専門家でない市井の人間でも、そのような愚には陥りたくないものです。

ご紹介の本、読んでみたいと思います。
Posted by スザンヌゥ at 2011年10月31日 13:07
スザンヌゥ様

読み応えのあるコメントありがとうございます。

回答が大幅に遅れ申し訳ありません。

私も池田氏のシャープな論理展開と一語も無駄のない文体は好きなのですが、「自分は正しい」というのが主張の中心になっているのが残念なところです。

三橋氏に男気を感じます。

とても参考になるコメントありがとうござました。
Posted by TabbyCat=>スザンヌゥ様 at 2011年12月06日 22:52
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