2012年09月21日

村上春樹「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」


夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです
村上春樹の「夢をみるために毎僕は目覚めるのです」は、国内外のインタビューを集めて編集したものです。物語にたいする考えや、小説の書き方が率直に語られていて、面白く読めました。

村上春樹氏の小説では、井戸の底にもぐり壁の向こう側へ抜けたり、羊男やらリトルピープルやら不思議なものと出会ったりと、非現実的なことが起きます。村上春樹氏は「これらはすべて私が物語を書いているときに経験したことです」なんて述べてしまうので、やっぱり小説家というのはどこか常人とは違うのだなと恐れ入ってしまいます。


村上春樹氏は、はじめに物語の筋書きを考えて小説を書くのでなく、自分も結末をしらないまま物語を書きすすめます。この書き方をむりやり簡単に要約すると、自分の内面の深いところまで意識を降ろしていき、そこから物語を見つけてきて文章に落としていく、という感じです。凡人にはよく理解できませんが、「自分の暗い邪悪な部分と対峙する危険な行為」と村上春樹氏は説明します。暗い邪悪な部分に飲み込まれないためには、自分の心身を強く保つ必要がある。それでマラソンやトライアスロンを続けている、と。

こんなやり方で書くと、宗教がかった支離滅裂な気味悪い小説ができあがりそうですが、そうならずに世界中の人々を引きつける物語を生み出せるのは村上春樹氏の才能なんだろうなと思います。

村上春樹氏は、早稲田大学時代に60年代の学生闘争を経験しています。当時の学生は「自分たちが行動を起こせば世界を変えることができる」と心の底から信じていたそうです。ところが世界を変えることはできずに学生闘争は終わり、村上春樹氏はじめ当時の学生たちは大きな挫折感を味わいました。

この挫折感、喪失感が村上春樹氏の初期の作品を生み出す原動力となったことは間違いないのですが、昔はその事実を村上春樹氏が語ることはなかったように思います。「学生運動で挫折した経験を元に小説を書きました」なんて恥ずかしくていえないという気持ちはわかります。60年代の学生運動の思い出をいまだに引きずっているテレビ文化人や共産党・民主党議員と一緒にされたくはないでしょうから。ところが、このインタビュー集では、学生運動と小説を書くことの関係に率直に語っています。たぶん、村上春樹氏にとって、「わざわざ隠しておく必要こともないこと」になったのでしょう。

ほかにも、強く印象に残った部分はたくさんあります。仕事にたいする真摯な態度や、マラソンを走ることについて、など。だけど、村上春樹氏のまじめな部分に対する私の感想はすでに、以前書いたので。今回は周辺的なおもしろさを感じた部分をとりあげてみました。


夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです


posted by Tabbycat at 07:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | チラシの裏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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